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矯正治療で顎関節症は改善する?関係性と治療アプローチ
2026/09/14
「顎が痛む」「口を開けると音がする」「朝起きると顎が疲れている」といった顎関節症の症状をお持ちの方から、「矯正治療で改善するの?」というご相談をいただくことがあります。噛み合わせと顎関節は密接に関連すると指摘される一方、矯正治療単独で顎関節症が必ず改善するというエビデンスは限定的で、慎重な評価と治療計画が必要です。本記事では、武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科が、顎関節症の病態、噛み合わせとの関連、矯正治療との組み合わせ、注意点を、日本顎関節学会や日本矯正歯科学会の知見を踏まえて解説します。顎の不調にお悩みの方、矯正治療と顎関節症の関係性を知りたい方の参考になれば幸いです。
目次
顎関節症とは(病態と分類)
顎関節症(Temporomandibular Disorders:TMD)は、顎関節や周囲の咀嚼筋に痛み・機能障害が生じる症候群の総称です。日本顎関節学会の調査では、生涯に1度は何らかの顎関節症状を経験する人は人口の2〜3割にのぼるとされ、決してまれな疾患ではありません。20〜30代の女性に多い傾向があるとされますが、年齢・性別を問わず発症します。
主な症状
- 顎関節の痛み(耳の前方の痛み)
- 咀嚼筋(こめかみ・頬・顎の下)の痛み
- 口を開閉する際の関節音(クリック音・クレピタス音)
- 開口障害(口が指3本分以上開かない)
- 顎の運動制限・違和感
- 頭痛・肩こり・首の痛みを伴うことがある
病型分類(日本顎関節学会)
顎関節症は病態によって以下のように分類されます。
- I型:咀嚼筋障害 咀嚼筋(側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋)の痛みや機能異常が主体
- II型:関節包・靱帯障害 関節包・靱帯の捻挫や炎症
- III型:関節円板障害 関節円板の前方転位(IIIa:復位を伴う/IIIb:復位を伴わない)
- IV型:変形性顎関節症 関節骨の変形・骨破壊を伴うもの
同じ「顎が痛い」という訴えでも病型によって治療方針が異なるため、初期評価が極めて重要です。
顎関節症の原因(多因子モデル)
顎関節症の原因はかつて「噛み合わせ」と単純に考えられていた時代もありましたが、現在は「多因子モデル」が主流です。複数の要因が重なり、その人の許容範囲(耐性)を超えたときに発症するという考え方です。
- 咬合性因子:過蓋咬合、開咬、片側咬合、咬合の不調和
- 筋活動性因子:歯ぎしり(ブラキシズム)、くいしばり(クレンチング)、TCH(歯列接触癖)
- 心理社会性因子:ストレス、不安、うつ傾向、職場・家庭の心理的負担
- 外傷性因子:顎の打撲、長時間の歯科治療での開口、頸椎の外傷
- 解剖学的因子:関節円板の形態、下顎頭の形態、靱帯の弛緩
- 習癖・行動因子:頬杖、片噛み、うつぶせ寝、楽器演奏、スマートフォンの長時間使用姿勢
これらの要因のうち咬合性因子の寄与は、近年の研究では従来考えられていたほど大きくなく、多くの研究で「噛み合わせの治療単独で顎関節症が必ず改善するわけではない」とされています。
噛み合わせと顎関節症の関係
噛み合わせと顎関節症の関係は、現代の歯科医学では「複雑な関連がある」と考えられています。著しい不正咬合が顎関節への負担を増やす可能性は否定できない一方で、軽度〜中等度の噛み合わせのずれが直接的に顎関節症を引き起こすという因果関係を示すエビデンスは限定的です。
関連が示唆される噛み合わせの問題
- 過蓋咬合(深い噛み合わせ):下顎の後方位を強制し、顎関節への過剰負担となる可能性
- 開咬(前歯が噛み合わない):奥歯に咬合力が集中し、咀嚼筋の過活動を招く可能性
- 受け口・出っ歯:下顎位置の偏り、咬合接触点の偏在
- 交叉咬合:左右非対称な咬合関係による顎位の偏り
- 欠損歯の放置:咬合崩壊による顎関節への影響
科学的見解の現状
「噛み合わせを治せば顎関節症が必ず治る」とは断言できません。日本顎関節学会のガイドラインでも、不可逆的な咬合治療(補綴・矯正・咬合調整など)は、顎関節症の症状が安定してから慎重に検討すべきとされ、まずは可逆的治療(スプリント療法・運動療法・薬物療法・行動変容など)から始めるのが原則とされています。
セルフチェックリスト
以下のような症状が複数あてはまる場合は、顎関節症の可能性があります。診断には専門医の評価が必要ですが、目安として参考にしてください。
- 口を大きく開けると顎関節や周囲が痛む
- 口を開閉するとカクッ、コキッという音がする
- 口が指3本分(40mm程度)まで開かない
- 朝起きると顎やこめかみが疲れている
- 硬いものを噛むと顎が痛む
- 頬杖・片噛み・うつぶせ寝の習慣がある
- 無意識に上下の歯を接触させている(TCH)
- ストレスを感じやすい・睡眠の質が低い
- 頭痛・肩こり・耳鳴り・めまいが慢性的にある
顎関節症の標準的な治療法
顎関節症の治療は、可逆的な保存療法から始めるのが原則です。以下は標準的な治療オプションです。
1. セルフケアと生活指導
頬杖・片噛みなどの習癖の修正、TCH(歯列接触癖)の自覚と是正、ストレス管理、硬いものの過度な咀嚼を避けることなど。多くの軽症例はこれだけで改善するとされます。
2. 開口訓練(運動療法)
関節可動域を維持・改善するための簡単なストレッチ。理学療法士や歯科衛生士の指導のもと行います。
3. スプリント療法
就寝時に装着するマウスピース型装置で、顎関節と咀嚼筋への負担を軽減します。歯ぎしり・くいしばりの保護にも有効で、保険適用の治療です。
4. 薬物療法
急性期の痛みには非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、筋緊張が強い場合は筋弛緩薬が処方されることがあります。
5. 物理療法
温熱療法、低出力レーザー、超音波などで筋緊張や疼痛を緩和します。
6. 関節腔内洗浄・手術療法
保存療法で改善しない重症例には、関節腔内洗浄や顎関節手術が選択肢となります。これらは口腔外科専門医による対応です。
矯正治療と顎関節症のアプローチ
顎関節症をお持ちの方の矯正治療は、慎重なステップで進める必要があります。当院では以下の順序を基本としています。
ステップ1:初診評価と専門医連携
顎関節の症状の程度、開口量、関節音、咀嚼筋の触診所見、画像所見(パノラマ、必要に応じてMRIやCBCT)を総合評価します。中等度以上の症状がある場合は、口腔外科や顎関節症専門医による先行治療を推奨することがあります。
ステップ2:可逆的治療で症状を安定化
スプリント療法、運動療法、セルフケア指導により、症状を可能なかぎり安定させます。症状が安定してから矯正治療の適応を判断するのが安全です。
ステップ3:矯正治療の計画と実施
顎関節への負担を考慮した装置選択、力のかけ方、治療目標の設定を行います。矯正中も顎の状態を定期的にモニタリングし、症状の変動があれば計画を見直します。
ステップ4:保定と長期管理
整えた噛み合わせの保定と並行して、顎関節症状の経過観察を続けます。歯ぎしり・くいしばりの管理には、夜間スプリントを併用することもあります。
矯正治療における注意点
顎関節症をお持ちの方が矯正治療を検討する際の重要な注意点をまとめます。
- 改善効果は保証されない:矯正で症状が改善するケースもあれば、変わらないケースもあります。事前に「症状改善が主目的」となる治療の限界をご説明します。
- 一時的な症状変動の可能性:噛み合わせの変化過程で顎関節症状が一時的に増減することがあります。
- 装置選択の配慮:開口量を制限する装置の使用は避ける、ヘッドギア・顎間ゴムの方向は慎重に選ぶなど、症例ごとに検討します。
- 連携医療機関:必要に応じて口腔外科・歯科口腔外科・耳鼻咽喉科・心療内科などとの連携を行います。
- 生活習慣のセルフケア:歯ぎしり・くいしばり対策、ストレスマネジメント、TCHの是正など、患者さま自身の取り組みが治療結果を大きく左右します。
- 不可逆的治療の慎重な選択:症状が不安定なまま矯正・補綴・咬合調整を行うと、改善どころか悪化する可能性もあります。
TCH(歯列接触癖)と矯正治療
近年、顎関節症の重要な要因として注目されているのがTCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)です。本来、安静時の上下の歯はわずかに離れている(安静空隙)のが正常ですが、TCHのある方は無意識に上下の歯を接触させ続け、咀嚼筋の過活動と顎関節への持続的負担を生じます。
TCHは強い噛みしめを伴わなくても、筋肉への持続的な低レベル収縮により慢性的な疲労を生み、咀嚼筋痛・頭痛・肩こり・顎関節症の遷延化に関与するとされます。デスクワーク中・スマートフォン使用中・読書中・運転中などに無意識に起こりやすいのが特徴です。
TCHのセルフチェック
- 仕事中・スマホ操作中に上下の歯が触れている
- 気がつくと食いしばっている
- 頬の内側に歯列の圧痕がある
- 舌の側縁に歯列の圧痕がある(舌圧痕)
- 咬筋(頬の側面)が硬く張っている
TCHの是正
付箋やリマインダーアプリで「歯を離す」というメッセージを目につく場所に貼り、見るたびに歯を離す習慣をつけます。これを2〜3週間続けると、無意識下でも歯を離せるようになるとされます。矯正治療中・治療後も、TCHの是正は顎関節症の予防・改善に有用です。
睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)と矯正治療
睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)は、人口の8〜15%程度に見られるとされる比較的多い習癖です。原因は完全には解明されていませんが、ストレス、睡眠の質、覚醒反応、自律神経活動などが関与するとされます。
睡眠時ブラキシズムは矯正治療の前後どちらでも生じうる現象で、歯の咬耗・楔状欠損・歯周組織への負担・顎関節症状・装置の破損などの問題を引き起こす可能性があります。
対策
- 夜間スプリント装着で歯と顎関節を保護
- 睡眠衛生の改善(就寝前のカフェイン・アルコール・スマートフォン使用の見直し)
- ストレスマネジメント
- 矯正治療中はリテーナータイプの装置をスプリント代わりに使用することもある
武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科の対応
当院では、顎関節症をお持ちの方の矯正治療について以下のように進めています。
- 初診カウンセリングで顎の症状を詳しくヒアリング(既往歴・生活習慣・ストレス・睡眠など)
- 顎関節の機能評価(開口量・関節音・筋肉触診・顎運動の観察)
- 必要に応じて画像診断(パノラマ・セファロ・CBCT)
- 症例に応じてスプリント療法を先行または併用
- 連携医療機関(口腔外科・歯科口腔外科)の紹介
- 矯正治療開始後も顎の状態を定期的にモニタリング
- 歯ぎしり・くいしばり・TCHのセルフケア指導
顎の不調と歯並びの両方が気になる方は、まずは無料カウンセリングでご相談ください。改善見込み・治療計画・限界について、現実的な見通しをお伝えします。武蔵小金井・小金井市・国分寺エリアで矯正治療をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 顎関節症があると矯正治療はできませんか?
多くの場合、矯正治療は可能です。ただし症状が強い場合は、まずスプリント療法等で症状を落ち着かせてから矯正治療を開始するアプローチが選ばれます。
Q2. 矯正で顎関節症が悪化することはありますか?
噛み合わせが変化する過程で、一時的に症状が変動することはあります。多くは経過とともに落ち着きますが、強い症状が続く場合は治療計画の見直しを行います。
Q3. 顎関節症の改善を主目的に矯正治療は受けられますか?
顎関節症の治療として矯正単独で行うことは推奨されません。著しい咬合異常があり、その改善が顎関節への負担軽減に寄与する可能性がある場合に、矯正治療を選択肢の一つとします。
Q4. スプリントとはどのような装置ですか?
マウスピース型のプラスチック装置で、就寝中などに装着します。顎関節への負担軽減や歯ぎしり・くいしばりの保護に使用される、保険適用の治療法です。
Q5. 顎関節症の治療費は別途かかりますか?
顎関節症の治療(スプリント療法等)は健康保険適用となり、矯正治療(自費診療)とは別の費用体系です。詳細は初診時にご説明します。
Q6. 関節音(カクッという音)だけがあります。受診すべきですか?
痛みや開口障害を伴わない関節音は、必ずしも治療を要しないとされます。ただし変化や進行の兆候を早期に把握するため、一度評価を受けておくと安心です。
Q7. ストレスで顎が痛くなります。歯科で対応できますか?
ストレス由来の筋緊張・くいしばりは顎関節症の重要な要因の一つです。歯科ではスプリント療法やセルフケア指導で対応しますが、心理面のケアが必要な場合は心療内科との連携を提案します。
Q8. 矯正治療の途中で顎の痛みが出たらどうすればよいですか?
速やかに担当医にご連絡ください。装置の調整、力のかけ方の変更、スプリント併用などで対応します。我慢して放置せず、早めにご相談いただくことが重要です。
▶ 矯正治療のご相談はお気軽に
記事をお読みいただきありがとうございました。歯並びや噛み合わせのお悩みは、武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科までご相談ください。土日も診療で、武蔵小金井・小金井市・国分寺エリアからのアクセスにも便利です。
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